戯曲はやはり見てこそのものなのか?『シェイクスピアを楽しむために』を読んで。

雑感

こんにちは。大人のおしゃれ塾、田中です。

先週、雑誌の整理をしていて出てきたのが翻訳家・松岡和子さんの記事。

松岡さんは2021年5月に、シェイクスピア全集の第33巻「終わりよければすべてよし」(筑摩書房)をもって全巻の翻訳を終えました。

なんと1996年1月発行の「ハムレット」以来、25年の歳月をかけての完了だそうです。

シェイクスピアの翻訳本

これまでハムレットの全巻翻訳は坪内逍遥と小田島雄志の二人だけ!

松岡さんは50歳からの28年間という歳月をシェイクスピア全37戯曲の翻訳に費やしたそうです。今回、筑摩書房から出版されたシェイクスピア全集はそのうちの33巻ということになります。

日本でたった3人目の偉業を成し遂げた松岡さんですが、本格的にシェイクスピアに向き合ったのはなんと50歳からだそうです。

以後、30年近い歳月をかけて、育児、家事、留学、家族の介護、自身の入院などをのりこえながら翻訳の仕事に取り組んできました。

松岡さんは翻訳にあたって、女性の視点も重視しています。

男性の翻訳家だと、例えば「ロミオとジュリエット」では、ジュリエットがロミオに対して敬語を使っているそうで、村岡さんはここにも違和感を感じたそうです。原文はそうなっていないのに、昔ながらの女性観からか、女性に必要以上にへりくだった言葉遣いをさせているそうなのです。

そんな松岡さんへのインタビュー記事を読んでいると急に松岡さん翻訳でシェイクスピアが読んでみたくなりました。

シェイクスピアの難解さ

ところがシェイクスピアは難しいというのが私の認識です。

小学校の頃「ベニスの商人」を子供向けの本で読みましたが、実際はそんな読みやすい物語ではありません。シェイクスピアの作品は小説ではなく「戯曲」ですから。

お芝居は観てこその世界です。戯曲の原文を楽しむようにはできていません。しかもシェイクスピアは16世紀末から17世紀初頭の英国人!(1564年– 1616年)

日本でいえば戦国時代を経て安土桃山、江戸時代に至る時期です。

日本の歴史でさえ、ややこしいのに、シェイクスピアが生きた英国の歴史となるとさらに荷が重く感じられます。

そんなわけで、松岡さんのシェイクスピアを読む前に、予習として阿刀田高(あとうだたかし)さんの『シェイクスピアを楽しむために』を読んでみることにしました。

阿刀田高の『シェイクスピアを楽しむために』

この本が新潮社から出版されたのが2000年6月。22年も昔なのですね。

文庫本もありますが、少しでも文字が大きい方が老眼の身には読みやすいと思い、Amazonで中古の単行本を買い求めました。

阿刀田さんは現在87歳とのことですが、2020年には『谷崎潤一郎を知っていますか』(新潮社)を刊行されたりご活躍の様子です。文筆業の方は長くお仕事される方が多いですね。

この本を読んで分かったこと。。。

1.シェイクスピアの戯曲の中には歴史劇というジャンルがあること。エリザベス朝に至るまで300年間のプロセスを描いたものがこれにあたる。シェイクスピアはエリザベス一世のお気に入りだったそう。

2.シェイクスピアの戯曲はたいてい5幕で構成されている。

3.俳優のセリフには言葉の韻を踏んだダジャレ満載で、翻訳者は大変苦労するらしい。

4.ジュリアス・シーザー、ベニスの商人、ロミオとジュリエットなど海外を舞台にした作品があるが、シェイクスピア自身は外国に行ったことがないらしい。話には種本があったりする。

5.物語の展開に関係ない話(セリフ)が多く、文章で読むと「これはいかがなものか」と思うが、観客にとってはそれが楽しみのひとつだったりする。

6.シェイクスピアはサービス精神にあふれていて、観客を楽しませるためなら何でもあり。話のつじつまが合わない部分が出たとしても、そこはご愛敬。楽しければすべてよし!

とりあえず、全12章12作品について読んだ結果、以上のようなことが理解できました。

やはりシェイクスピアは「観てなんぼ」の世界なのですね。

私の観劇体験

そういえばこの秋11月に、友人T先生にご招待いただき、演劇「最後のジャズ」を観ました。

会場は広島県民文化センターで、広すぎない会場が劇の構成・内容にちょうど良かったです。

【ピースフルシアター】という「平和」を発信していくイベントとして行われたこの演劇。

広島でジャズ喫茶を営む村井家を通して、市中の人々の何気ない日常の幸せを一瞬で奪い去る戦争、平和の尊さをそんな日常の中から見つめ直すストーリーが、戦前、戦中、戦後の村井家や日本の変化を通して描かれています。

役者さんたちの表現力や発声や活舌の良さに感心しながら、どんどん物語に引き込まれていきました。

ただ反戦を声高に唱えるのではなく、「平和」を持続していくことの重要性が、静かに、しかし力強く、訴えてられていたと思います。

私はこれまでファッションショーは20数年、様々な舞台で行ってきましたが、見る側にまわった経験はダンスの公演以外ほとんどありませんでした。宝塚歌劇団の広島公演を観に行ったくらいでしょうか。

演劇には文字で読むのとは違った面白さがあります。

そんなことに気付かせてくれたシェイクスピアであり、観劇の体験でした。

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